資料:脳幹網様体賦活系

「覚醒水準ないし意識の維持に重要な役割を話している脳の部位」と授業で紹介しているのだが、実際、どのような仕組みで覚醒に関わってくるのか、また、この分野の研究は、どんな風に進められているのか.

脳幹網様体賦活系 - 脳科学辞典

理研で現在進行中の研究.

脳の覚醒レベルを上げる神経メカニズムを解明/自然科学研究機構 生理学研究所

理解できそうなところまでまとめてみると、

  • 覚醒の及び意識の維持には、上行性網様体賦活系(古典経路)ascending reticular activating system;ARASと視床下部調節系(別経路)hypothlamic controlling systemの2つの経路の働きが重要である.上行性網様体賦活系は、橋中部から吻側に広がり脳幹被蓋部を上行して、視床から大脳皮質へ投射する.視床下部調節系は、視床下部から辺縁系に作用する(従来は網様体と一括されていた).最近、オレキシンorexin(hypocretin)という覚醒作用のある物質が発見された.睡眠行動や摂食行動にも関与しているらしい.
  • 意識の水準(質)は、清明度と内容の2つの側面から考えることができる.清明度の低下は、意識混濁をもたらし、内容の変容は意識変容をもたらす.意識混濁が見られると、多少の意識変容が見られる.

  意識混濁の段階:意識不鮮明 → 傾眠 → 嗜眠 → 昏迷 → 半昏睡 → 深昏睡
  意識変容の段階:せん妄 → 急性錯乱状態 → もうろう状態 → 夢幻状態
意識障害の程度は、脳外科や内科でそれぞれことなるスケールを用いて評価するらしい.

それにしても、知らない事が多すぎて、概要をつかむことすら難しい.
1つ確かなのは、心理学や認知科学で扱う人間の状態は、意識の水準の特定の部分(いわゆる覚醒しているとき)ということだ。生物としての人間の状態の、ごく一部ということ.意識不鮮明、せん妄、錯乱、もうろう状態のヒトを扱うことは、とても恐ろしいことのように感じる.